猫のフィラリア症について
春から秋にかけて、蚊が増える時期になるとフィラリア予防のシーズンが始まります。
フィラリアというと犬の病気というイメージを持たれる方が多いですが、猫にも感染する病気です。
しかも、猫フィラリア症は犬フィラリア症よりも診断が難しく、突然死を招くこともある病気です。
今回は、猫のフィラリア症の症状や検査、そして大切な予防法について詳しく解説します。
1. 猫のフィラリア症とは?
フィラリア症は、蚊が媒介する「犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)」という寄生虫が、肺の血管や心臓に寄生することで起こる病気です。
フィラリアに感染した蚊に猫ちゃんが刺された時にフィラリア幼虫が猫ちゃんの体内に入り、その後体の中で成長して肺の血管や心臓周囲に寄生します。
犬では比較的よく知られた病気ですが、猫でも感染は起こります。
ただし猫では、体内に入ったフィラリアの多くは途中で死滅し、成虫まで成長するのはごく一部(約2〜7%程度)とされています。
しかし、少数しか寄生しなくても、猫では強い炎症反応が起こることがあります。
2. 猫のフィラリア症の症状
猫のフィラリア症では、無症状のこともありますが、次のような症状が見られることがあります。
比較的よく見られる症状
- 咳
- 呼吸が速い
- 呼吸が浅い、苦しそう
- 嘔吐
- 元気がない
- 食欲低下
重症の場合
- 強い呼吸困難
- 失神
- 発作
- 突然死
特に注意が必要なのが、HARD(Heartworm Associated Respiratory Disease)と呼ばれる状態です。
これは、フィラリアの幼虫が肺の血管へ到達した際に強い炎症反応を起こし、
- 咳
- 呼吸が苦しそう
- ゼーゼーする
- 喘息のような症状
などを引き起こすものです。
猫喘息や気管支炎と非常によく似た症状を示すため、見分けが難しいことがあります。
当院でも、猫の「咳」「呼吸が速い」「なんとなく元気がない」という症状では、喘息や気管支炎などの代表的な疾患にくわえて猫フィラリア症も鑑別疾患のひとつとして考慮することがあります。
3. 猫フィラリア症の診断
猫のフィラリア症の診断には主に以下の検査を組み合わせます。
- 血液検査(抗原検査・抗体検査)
- 胸部レントゲン検査
- 心エコー検査
ただし猫では、
- 寄生数が少ない
- 雄のみ、雌のみの単性寄生がある
- 幼虫だけで症状が出ることがある
といった理由から、実際には陽性であっても陰性と結果が出てしまうことがあります。
そのため、犬のフィラリア症に比べて猫のフィラリア症は診断が難しいとされています。
そのため当院では、単に検査結果だけでなく、症状・生活環境・画像検査を合わせて総合的に慎重に判断することが大切だと考えています。
4. 室内飼育の猫ちゃんについて
「うちは完全室内飼育だから心配ない」と思われることも多いですが、室内飼育の猫でもフィラリア感染は起こります。
蚊は、玄関の開閉や換気のタイミングなど、ほんの少しの隙間から室内に入ってきます。
実際、フィラリア症と診断された猫の約4頭に1頭は「完全室内飼育」だったというデータもあります。
室内・屋外に関わらず、すべての猫に予防が必要です。
5. 猫フィラリア症の治療と予防
猫のフィラリア症には、犬のような確立された駆虫治療がありません。
症状に応じて、
- 呼吸管理
- 抗炎症治療
- 対症療法
などを行いますが、虫が死滅する際に強い炎症を起こすこともあり、治療にはリスクが伴います。
そのため、「かかってから治す」のではなく、「かからないように予防する」ことが大切です。
- 予防薬の種類: 主に首筋に垂らすスポットタイプ(外用薬)が一般的で、月に1回投与します。
- 予防期間: 蚊が出始めてから、出終わった1ヶ月後までが目安です(例:5月〜12月など)。
- 事前の検査: 犬と異なり、予防開始前の血液検査は必須ではありませんが、健康状態の確認のために推奨されることがあります。
まとめ
猫のフィラリア症は、一度感染してしまうと完治が難しく、生涯にわたる治療や突然死のリスクと隣り合わせになります。
しかし、毎月1回の予防薬の投与で予防することができます。
特に呼吸器症状が気になる猫ちゃんや、これまで予防をしたことがない猫ちゃんは、お気軽にご相談ください。
