猫のアジソン病について

はじめに

猫のアジソン病(副腎皮質機能低下症)とは、左右の腎臓付近にある副腎皮質から分泌されるホルモン(糖質コルチコイド=コルチゾール、鉱質コルチコイド=アルドステロンなど)が著しく少なくなることで発症する内分泌疾患です。
アルドステロンとコルチゾールの両方が不足するアジソン病を定型型、コルチゾールのみが不足するアジソン病を非定型型と呼び、非定型型のアジソン病は発見が困難です。
猫のアジソン病は犬のアジソン病に比べて非常に症例数が少ないと言われていますが、当院ではこれまで多くの猫ちゃんのアジソン病を診断・治療しています。

猫のアジソン病の特徴

猫のアジソン病は、非常に稀な病気(教科書にはこれまでに40例ほどという記載もあります)と言われていて、大学病院などの2次診療施設でもほとんど目にすることは無いと言われていますが、当院では猫のアジソン病はこれまでに10症例程度は診断・治療をしています。10症例というと少なく感じられるかも知れませんが、割合的には決して稀というような数ではありません。

当院は内分泌疾患の2次診療施設というわけではありませんので、決して偶然アジソン病の猫ちゃんが集まって来ているというわけではありません。このことは、これまで猫のアジソン病が高い頻度で見逃されてきているということを示唆していると考えられます。

食欲不振や消化器症状の猫ちゃんに、試験的にステロイドというお薬で治療をするとすぐに改善することが多く、このことがアジソン病の発見を見逃している原因かもしれません。

当院で診断した猫のアジソン病は、そのほとんどが非定型型です。
非定型型のアジソン病は定型型のアジソン病に比べて診断が難しく、ACTH刺激試験(※)という特殊なホルモン検査をしなければ確定診断することが出来ません。治療前のアジソン病は副腎の萎縮を伴わないことも多く、一般的な血液検査やエコー検査などでは非定型型のアジソン病を見つけてあげることはできません。このことが猫のアジソン病の発見を見逃している要因だと考えられます。
(※)詳しくは犬のアジソン病の記事をご覧ください

その他、猫のアジソン病は下垂体萎縮症という病気が原因の2次的なアジソン病のことも多く、この場合は副腎の機能不全が原因ではなく、下垂体という脳の付属臓器の機能不全により間接的に副腎からのステロイドホルモンの分泌不全が起こります。
この病気は子犬や子猫の時から罹患していることも多く、食欲のない子犬や子猫の検査をすると、アジソン病だったということも多く、当院でもたくさんの患者様が早期に見つかり、治療によって元気になっています。

近年、猫の食欲不振改善薬として発売されたエルーラというお薬がありますが、このお薬は下垂体からの成長ホルモンの分泌を促すことで食欲を改善するお薬です。
このことからも猫の食欲不振の要因の一つとして下垂体疾患が関与していることを示唆していると考えられます。

猫のアジソン病の症状

猫のアジソン病では、犬と比較して症状がよりあいまい・断続的で「なんとなく元気がない」「食欲が落ちている」というようなサインから始まることが多く、「隠れた疾患」として見逃されやすいです。
「猫のアジソン病だけに見られる」症状というよりは、他の疾患でも見られるような症状が多いため、飼い主さまが「なんとなくおかしい」と感じたら注意が必要です。

以下、典型的な症状を挙げます:

  • 元気がない、活力低下、動きたがらない
  • 食欲低下、体重減少
  • 嘔吐・下痢・血便などの消化器症状を繰り返す
  • 多飲・多尿、または脱水傾向
  • 筋肉量の低下、ぐったりする、震える
  • 血液検査での電解質異常(低ナトリウム・高カリウム)や低血糖、低血圧など

猫のアジソン病はストレスに対するホルモン量が不足しているため、ストレス(精神的なストレスだけでなく、寒暖差、肉体的な負荷、環境の変化など)がかかると症状が出やすくなります。
たとえば、普段は元気だったのに「ちょっとしたことですぐに体調を崩してしまう」「定期的に食欲不振になったり消化器症状が出る」といった状況は、アジソン病を疑うポイントとなります。

おわりに

愛猫が「いつもとちょっと違う」と感じた時、たとえば「元気がない」「食欲が落ちている」「繰り返す嘔吐・下痢」「体重が減ってきた」「突然ぐったりした」などのサインは、アジソン病の可能性を含んでいます。

特に猫に多い非定型型のアジソン病は一般的な血液検査では発見することが困難で、気が付かずに長期間(数年単位)罹患していることが多い病気です。非定型型のアジソン病はやがて定型型のアジソン病へと進行し、重度の電解質異常と脱水によるアジソンクリーゼ状態になってから初めて発見されることも多く、発見時にはすでに手遅れになっていることが多いです。症状があいまいなため、気が付いてあげることが難しい病気ですが、当院では多くの患者さまのアジソン病を早期に発見・治療して健康に過ごして頂いています。

※当院はご予約優先制になります。
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【クラーク動物病院】
住所:札幌市豊平区福住2条10丁目15-1
電話:011-799-1080

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休診日:日曜午後、月曜日

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