麻酔中の「悪性高熱」への対応について

はじめに

今回は比較的まれではありますが、非常に重大な麻酔時合併症である悪性高熱について解説いたします。
当院では悪性高熱の発症に備え、特効薬として知られるダントロレンを常備しており、もしものときにも迅速に対応できる体制を整えています。

悪性高熱とは

悪性高熱は、主に麻酔薬(特に揮発性吸入麻酔薬)や筋弛緩薬の投与を原因として、遺伝的に感受性を持つ動物に急激な代謝亢進、筋収縮、体温上昇などを引き起こす状態です。
犬においては、麻酔導入あるいは麻酔中に比較的短時間(5〜30分程度)で発症が報告されています。
この状態が発生すると、筋肉の異常収縮→二酸化炭素産生増加・熱産生増加→体温・心拍・呼吸数の上昇→循環・呼吸・代謝機能不全になり、死に至る危険性があります。

悪性高熱の主な原因・誘因

麻酔薬による発症:揮発性吸入麻酔薬(たとえばハロタン、イソフルランなど)および筋弛緩薬(脱分極性筋弛緩薬)など。

外的要因:ストレス・興奮・激しい運動・体温上昇など、麻酔以外の誘因も報告されています。

遺伝的素因:グレイハウンドやラブラドール・レトリーバーなど一部の犬種ではリスクが高いという報告があります。

悪性高熱の症状・徴候

  • 呼吸数・心拍数の急激な増加
  • 筋肉の硬さ・こわばり(特に顎や咬筋、四肢)
  • 体温の急上昇
  • 二酸化炭素の排出異常・多量のCO₂産生・代謝性アシドーシス傾向
  • 高カリウム血症・筋融解(クレアチンキナーゼ上昇・ミオグロビン尿)などの報告もあります。

悪性高熱に対する当院の対応

悪性高熱は「発症したら時間との勝負」の疾患です。以下のような対応が迅速に必要となります:

  1. 麻酔薬の中止・換気確保(100%酸素、高換気)
  2. 体温を下げるための冷却(冷却パック・氷・冷却液・外部冷却)
  3. 筋収縮を抑える薬剤の投与。ここで中心的な治療薬としてダントロレンを使用します。
  4. 補助療法:輸液・電解質管理・カリウムモニタリング・腎機能・心拍・呼吸・凝固機能の監視など。

当院では、上記のように万が一悪性高熱が発症した際に備え、ダントロレンを常備しております。また、麻酔中モニタリング、血液・電解質・循環・呼吸モニタリング設備を整えており、万が一の事態にも迅速かつ適切に対応できる体制をとっております。

おわりに

手術・麻酔は大切な治療を行うための重要な手段ですが、それに伴うリスクもゼロではありません。悪性高熱という稀な合併症についても知っていただくことで、飼い主さま・当院双方が安心して臨む準備ができます。麻酔のリスクをできる限り少なくする体制づくりを今後も進めてまいります。

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【クラーク動物病院】
住所:札幌市豊平区福住2条10丁目15-1
電話:011-799-1080

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午後:16時から19時
休診日:日曜午後、月曜日

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